温故知新

温故知新

確か15年程前だったと思うけれど、当時BEAMSに勤めていた時に爆発的にヒットしたアウターがあった。バイヤーが海外の展示会に行って見て来たものや現地の情報を直接スタッフに伝えてくれる出張報告会というものがあって、(SNSが無かったので、これこそが海外を知る数少ない情報源だった)

そこでイタリアのPITTIではスーツのジャケットの上にミリタリーアウターであるM-65を羽織っているのが格好いい、という”ハズシ”を知った。

ASPESIのM-65は店頭に入荷するや否やもの凄い勢いで売れたし、当時の雑誌もこぞって特集をした。海外サイズだったからとにかく大きくて、日本ではXXSから一番大きくてMサイズという取り扱いだったのも懐かしい。

もちろんスタッフの多くも出勤時はスーツの上にネイビーのM-65を羽織ってたし、そんなにたくさん洋服を買う余裕の無かった僕にとってはめちゃめちゃ憧れのアイテムだった。

古着のM-65なら当時は随分安く買えたけど、艶っぽさというかリッチ感みたいなものが感じられないので、当時はスーツに合わせたりして着てなかったなあ。

今でこそカジュアルダウンする時に着ると格好良いけれど、スーツに、ドレスに合わせる感じではないかな?と個人的には思っている。

また、80年代半ばにはフレンチトラッドの王道アイテムとしてベージュのM-65は頻繁に洒落者たちのアウターとして取り上げられていた。

(中村さんのブログや山下さんのブログにも詳しく書いているので是非そちらも!!)

当時の流行のきっかけはイヴ・モンタンのレコードジャケットのスタイリングからというのも時代を感じる。

とにかく前置きが長くなってしまったが、M-65は僕の中でも大人の男性が着用する一つのアイコン的アイテムで、今回のPHENIXさんとのコラボが決まった時にもすぐに頭に浮かんだアイテムだ。

過去を踏襲しつつも新しい、そんなM-65を目指した。

特にGORE-TEXを使えるというのがとても大きくて素材は即決、あとはディテールやシルエットを調整していくだけだった。

僕の私物のM-65をモデルサンプルとして使用したのだけれど、僕が持っているのは1966年〜68年頃に製造されていた2ndモデル。

1stから肩のエポレットが追加されてより逞しい印象なのが特徴だ。映画「タクシードライバー」の中でロバート・デニーロが着ていたのもこのモデルで (もちろん We are the people の缶バッジも持っている)M-65というとこのモデルが一番という声も多い。



オリジナルは二の腕とかもとにかくマッチョな仕様なので、細部に渡ってモダンに修正していく必要があった。

肩のエポレットも格好良いけど、肩周りが四角く見えてしまうのであえてフェイクのエポレットで意匠だけ残したり、ポケットの位置や大きさなども現代的にバランス良く調整した。


拘ったポイントの一つとして、

フードをしまう襟のボリューム感は特に注意をした。

適度にボリュームを持たせることで首元が引き締まって、とても男性らしく見えるので素材の特性やハリなどを見ながら修正を重ねた。

 


かくして40年近くもアイコン的ファッションアイテムとして君臨し続けるM-65を、ドレスという括りで再解釈してGORE-TEXという最強素材を乗せて新しい形で作り上げることが出来た。

すでに何度も袖を通しているけれど、控えめに言って最高。

これから春、秋と大活躍間違いなしのアイテムだと思う。

是非是非。